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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)764号 判決 1958年7月08日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山川常一の上告理由第一点について。

本件において、被上告人は同人と上告人との間に昭和二四年三月一八日上告人の買受ける黒砂糖を被上告人が斡旋し、その斡旋料として一斤につき金一〇円宛を上告人が被上告人に支払うことを約束し、被上告人は右約旨に基き黒糖四三〇〇斤を上告人に斡旋して買受けさしたので、上告人に対し金四三〇〇〇円の斡旋料を請求すると主張し、原審は被上告人の右請求を認容し、上告人にその支払を命じたこと、記録上明らかである。そして、民訴一八六条にいう「事項」とは訴訟物の意味に解すべきであるから、本件につき原審が当事者の申立てざる事項に基いて判決をした所論の違法はない。なお、斡旋料支払の特約が当事者本人によつてなされたか、代理人によってなされたかは、その法律効果に変りはないのであるから、原判決が被上告人と上告人代理人増谷照夫との間に本件契約がなされた旨判示したからといつて弁論主義に反するところはなく、原判決には所論のような理由不備の違法もない。

同第二点について。

所論代理の事実は、証人西村文子(記録五三丁裏)同黒岩文子(同二〇七丁)被上告本人(同二一三丁裏)の各供述によって認められ、これらの供述は、被上告人の援用するところであるから、原判決には所論の違法はない。

同第三点及び第四点について。

所論のような具体的事実の認定はこれを要するものではなく、原判決挙示の証拠によれば判示事実を認めることができるので、原判決には所論の違法はない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)

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